コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/01/31

震災で見せた地域建設業の使命

▼ 未曾有の大災害を前に立ち上がったのは自衛隊や消防、警察だけでなく、その最前線には、道路・橋梁・港湾の復旧に尽くした地域建設業者がいた―。弊社が加盟する地方建設記者の会らの編著「大震災からの復旧~知られざる地域建設業の闘い」(ぎょうせい刊)には、復旧初動時における地域建設業の活動が貴重な歴史の証言としてつづられている
▼ 自ら被災した者も多いなか、いち早く復旧作業に取り組んだ姿には胸を打たれる。人命救助最優先のもと急がれる道路啓開、遺体発見のたび中断されるがれき撤去。自分の子どもと同じくらいの遺体を発見し、作業を止めて泣き崩れる作業員もいたという。ある建設業者は、地域の人の励ましの声に折れそうな心を立て直したと語る
▼ 原動力となったのは、何より地域建設業者として地域を守るという使命感だった。「悲しみの中でも、ふるさとの再生に向かって立ち上がる」「拾った命は世のため人のために使う」。こうした言葉には、地域建設業者としての誇りがにじみ出る。正確な情報が乏しいなか、黙々と作業に当たった状況判断を「建設業で働く現場の人間の凄さ」と言い切る者もいる
▼ もちろん初動時の復旧作業は、建設業の範疇を超える過酷なものだった。危険を覚悟でがれきの山と闘った多くの建設業者たち。彼らを支えていたものは何か。その問いに、ある建設会社社長はこう語っている。「使命感…。いや、違うな。そんな格好いいものでも、簡単なものでもない」。現場で奮闘した者だけが知る重い言葉として受け止めねばならない。

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