コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/05/01

壮大な「宇宙エレベーター」構想

▼ ゴールデンウイークの連休に伊豆・湯河原に出かけ、日ごろの疲れを癒してきた。湯河原は「万葉集」にも歌われる名湯で、古くから“薬師の湯”とも言われ、明治以降は多くの文人墨客に愛されてきた。その湯には今も昔も心と体にやさしい効能があるようだ
▼ その温泉街の中心部に、「万葉集」の中で唯一いで湯の様子を詠んだ歌「あしがりの土肥(湯河原の古名)の歌」にちなんで開かれた「万葉公園」がある。千歳川沿いに立地する緑地公園で、川のせせらぎを聞きながらの散策は心が休まる
▼ 公園を散策していると、坂の途中で小さな神社に出くわした。赤い幟(のぼり)と鳥居の奥に祠があり、その周りに大小の狸の像が何体か、大きなお腹を丸出しにして愛嬌ある姿で並んでいる。神社に狐はつきものだが、狸は珍しい。傍らの説明には「狸福(りふく)神社」とあり、由来によれば、漁師の弓矢に傷ついた雄狸がこの地の温泉を見つけて傷を癒していると、同じように足に火傷を負った雌狸が浸かりにやって来た。二匹の狸は来る日も来る日も傷を癒しに通ううち、恋仲になり、やがて傷も治って晴れて夫婦となったという
▼ さらに、狸が美女に化けて、山道に迷った者や疲れた者などを温泉に導いたという伝承もある。狸が人間に恩を返すことで、温泉の効用を広める伝道者の役割を果たした格好だ
▼ 湯河原の温泉発見にまつわる話には、修験者発見説、役行者発見説、行基発見説、弘法大師発見説と数あるが、狸の話もその一つ。神社に祭られることで、狸は温泉の素晴らしさを今に伝えているのかもしれない。

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