コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/05/26

驚きの高齢化率

▼数字を見て愕然とさせられるデータがある。ある程度は頭で理解していても、数字を目の当たりにするまで実感から程遠いことも多い。かように数字には説得力がある
▼埼玉県の2倍を筆頭に、千葉県と神奈川県が1・9倍――。厚生労働省の推計による、2025年における75歳以上の人口増加率(10年比)が、この数値である。向こう15年でほぼ倍増とは、急速な高齢化などという表現さえ生やさしく感じられる。今後発生する爆発的な介護需要にどう対応していくか、同省も本格的な検討を始めたが、支援施設やサービスの確保など対応策は待ったなしだ
▼一昔前までは高齢化は過疎地や地方の課題という文脈で語られることが多かったが、今や人口の高齢化は都市部でより深刻な問題となりつつある。都道府県別の高齢者人口の推計では、三大都市圏にある都道府県の名前が必ず上位にくる。しかし都市部では、建設用地の不足や高い地価などがネックとなり、新たな施設の建設も簡単ではない。今後は、高齢者施設の地方への建設など、都市と地方との連携も重要な課題になる
▼高齢者の増加率が全国でもトップクラスの千葉県にあって「他の都市のモデルになる」と注目されているのが、東京のベッドタウンでもある柏市だという。同市は人口40万人の中核市で、ここ数十年で人口が急増し、広い農地や工業団地も擁する、日本の大都市近郊コミュニティの縮図のような街と言っていい
▼同市では、東京大学と都市再生機構と共同して、1964年に入居が始まった豊四季台団地を舞台に「長寿社会のまちづくり」が進められている。高齢者が施設や病院に入らず、できるだけ地域で暮らし続けられる仕組みづくりを構想中で、14年度をメドに本格的な取り組みが始まる
▼今後、システムや技術、サービスが個人や地域にもたらす効果を科学的に検証するなかで、説得力のある数値が示されることを期待したい。同時に、同市にはこうした取り組みを通して、高齢化社会における先進都市モデルになってもらいたい。

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