コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2011/10/24

キーン氏が願う「東北再生」

▼東日本大震災直後に日本から出国した外国人が多いなか、日本文学研究者のドナルド・キーン氏が日本国籍取得と永住を決めたニュースは、多くの日本人を勇気づけた。今回の震災で心を痛め、被災者との連帯を示すための決断だったという。「私は『日本』という女性と結婚した」という感動的な言葉も残してくれた
▼キーン氏は松尾芭蕉の「奥の細道」の英訳でも知られ、東北とのゆかりも深い。東北大学(仙台市)で半年間、講義したこともある。震災で平泉の中尊寺は難を逃れたが、何度も訪れた松島や多賀城など芭蕉ゆかりの地は大きな打撃を受けた
▼キーン氏は学生時代に「源氏物語」の英訳を読み、日本文化に興味を抱いた。日米開戦後は海軍将校として、日本兵の日記を翻訳したり捕虜を尋問したりした。迫りくる死を意識した兵士の日記には、戦意を鼓舞する言葉ではなく、遠い故郷を懐かしむなど、生身の心境がつづられ、キーン氏の日本人感を大きく変えた。「私が本当に知り合った最初の日本人は、これらの日記の筆者たちだった」とも語っている
▼そのキーン氏が19日、講演で訪れた仙台市で会見し、日本は戦後の復興と同じ奇跡を東北でも起こせると指摘。「東北全体に美しい町をつくってほしい」と訴えた
▼復旧・復興へ、災害に強い街づくりは不可欠だが、その上で、キーン氏の言う「日本ならではの美しさ」を甦らせたい。「(日本の)未来は以前より立派になると信じる」と語ったキーン氏の言葉を、今度は私たちが信じる番だ。

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