コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2014/10/28

誤解を招いた未消化工事

▼真実は一つだろうに、なぜこうも解釈がずれしまうのか。ここへきて、公共工事の増加により未消化工事が増えている、復興事業や民間工事を阻害しているといった論調の記事が目につく。一見もっともらしい理屈だが、実態はずいぶん違う。ちょっと待てよ、と言いたくなる
▼そもそも「未消化工事高」とは、建設業者が国や自治体から受注した公共工事額から終わった分の工事額を引いた金額を言う。国交省の推計でこの未消化工事高が7月に16兆7333億円となったことから、あたかも人手不足や資材高騰で着工が遅れるなどして積み上がり、予算執行が進んでいないとの報道が一部マスコミでなされた
▼現在施工中の未消化工事の増加は、いわば手持ち工事量が増えていることを示すもので、業界としてはむしろ歓迎すべきこと。大手建設業団体幹部も「建設会社が消化できない工事を受注することはあり得ない」とし、国交省も「労務単価や工期の適正な設定などで人手は確保できており、公共事業予算の執行は着実に進んでいる」との認識を示している
▼事実、国交省の公共事業等予算の執行率は、14年度当初予算が第1四半期で約45%と近年で最高水準、13年度補正予算も約72%で昨年同期を大きく上回る水準だ。一方で14年度の建設投資額自体は前年度と同程度の約48兆円で、ピーク時の約84兆円(92年度)の約6割にすぎない。「ミニバブル」と言われたリーマンショック前を下回る水準で、「建設バブル」という見方も的外れと言わざるを得ない
▼公共工事が民間工事を圧迫しているとの批判にしても、そもそも公共は9割弱が土木工事、民間は8割強が建築工事で、施工業者も土木と建築で一定のすみ分けが出来ているというのが国交省と建設業界の共通認識だ
▼国交省は〝未消化〟という響きが消化不良のようなイメージを招きかねない「未消化工事高」の呼称を、8月分から「手持ち工事高」に変更した。おかしな誤解を避けるためにも、表現方法には配慮や工夫が必要だ。

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