コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2015/02/16

山崎直子氏の語る宇宙と地球

▼外から宇宙や地球を眺める特権はまだ限られた人にしか許されていない。1961年に有人飛行が始まって以来、宇宙へ行った人は500人強。それが多いか少ないかはともかく、宇宙飛行士になって実際に飛び立つまでには想像を超える苦労と努力があるものだと、女性宇宙飛行士の山崎直子氏の話を聞いて思った
▼先月開かれた日本専門新聞協会主催の講演で氏は、自身が宇宙飛行士を志したきっかけとして、スペースシャトルチャレンジャー号の事故を挙げた。打ち上げから73秒後の爆発は、ショッキングであると同時に、現実はSFやアニメとは違うことを実感させられたという
▼99年に宇宙飛行士になってから2010年に宇宙に飛び立つまでの11年間が長かったとも語る。いつ宇宙に行けるとも知れず、訓練に明け暮れる日々。そんな中でも腐らず、謙虚で素直に学び続けることがいかに大切かを学んだ
▼03年にスペースシャトルコロンビア号の事故で仲間を失い、飛行再開も不透明になったこの時期が最も苦しかったとも振り返る。そんなときにも後悔しないよう前を向き、単身、ロシアに渡ってソユーズの訓練に参加した
▼10年4月にはディスカバリー号で待望の宇宙に向かったが、国際宇宙ステーションまではわずか8分30秒。宇宙での生活は様々な国の人との共同生活であり、宇宙船は地球を凝縮したミニチュアのよう、と表する。しかも宇宙から見れば、地球自体が一つの宇宙船のようで、上も下もない相対的な世界。生き物のように動く地球を知るとき、当たり前に思っていたことが掛け替えのないものと気づいたそうだ
▼宇宙から見る地球は、どこをとっても美しい。緊迫する中東地域さえも―。近い将来、多くの人が宇宙旅行を実現し、少しでも相互理解につながることが夢という。それでもなお、宇宙から帰還して地球に降り立ち、風に吹かれ、草木の香りを嗅いだ瞬間が何よりも美しく感じたという氏の言葉には、平和への切なる祈りが込められているように聞こえた。

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