コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2015/06/16

迷走続く新国立競技場

▼2020年東京五輪のメイン会場となる新国立競技場の整備をめぐって計画が二転三転している。この迷走ぶりには呆れるほかない。当初計画にあったアーチ型屋根を大会後に整備し、8万人の観客席の一部は仮設とする大幅な変更が示されたばかりだが、今度は一転、整備費削減に努めながら屋根を予定通り建設する方向となった。いいかげん決着してほしいというのが率直な感想だ
▼下村文科相は先月中旬、舛添都知事に対し、計画変更の考えのみならず、約500億円の都負担も求めた。舛添知事は「誰が責任を取るのか」と痛烈に批判したが、それも当然の話だろう
▼そもそも同競技場の整備では、総工費を1300億円としてコンペを実施し、12年にデザインを決定したが、その後、建設に3000億円を要することが判明。事業主体の日本スポーツ振興センター(JSC)は昨年5月に規模を縮小し、工費を1625億円に抑えた基本設計案を公表していた。当初案からかけ離れたものになれば、デザイン案をコンペで選定した意味があったのかと首をかしげたくもなる
▼報道によれば、JSCはこのほど、コンペデザイン監修者(ザハ事務所)に、アート型の屋根を予定通り建設する計画を続行する方針を伝えた。19年ラグビーW杯までの完成を目指し、協力し合う意思確認も行われた。今後は、ザハ事務所を含めた設計チームが複数の計画を準備しながら進めていく方針という
▼他国開催の五輪やW杯などでは開幕間近なのに会場が出来上がっていないという話はよく聞く。しかし、よもや日本でこうした事態が起きようとは思ってもみなかった。整備にあたっては、五輪会場として優れた競技場を造ることはもちろん、五輪後にレガシー(遺産)として活用する視点も忘れてはなるまい
▼先日のIOC理事会ではバッハ会長から「(新国立)問題は一刻も早く解決されるべき」と苦言を呈された。これ以上の迷走は許されない。日本の信用を失墜しかねない深刻な事態ととらえるべきだ。

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