コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2015/09/07

後世に残したいクラシックホテル

▼最近、クラシックホテルを訪れる機会が何度かあった。老舗の宿といえば旅館を思い起こしがちだが、国内のクラシックホテルにも百年を超える歴史があり、とりわけ外国との架け橋的存在として大きな役割を担ってきた。ひとたび足を踏み入れれば、シティホテルでは味わえない、どこか懐かしいレトロ感にも浸れる
▼最新のホテルも快適だが、日本が近代国家へと脱皮する黎明期に欧米文化のライフスタイルを具現化しようとしたクラシックホテルには愛好者も多い。筆者もその一人だが、その歴史的な建築はもちろん、館内の調度品や展示物なども文化財級の価値をもつものだったりする
▼日本には現在、様々な業態のホテルがそれぞれのマーケットを形成している。近年は都内を中心に外資系ホテルの開業が相次ぐが、こうした動きもホテル業界全体に大きな刺激をもたらし、相互に啓発される形で業界全体の底上げにつながっていけば、これほど望ましいことはない
▼クラシックホテル人気を背景に、数少なくなった施設の価値を伝えていくため、各ホテルが手を組み、様々なプロモーション活動などを展開する「クラシックホテルの仲間たち」という組織が設立されている
▼1997年に発足し、日光金谷ホテル(開業1873年)、富士屋ホテル(同1878年)、軽井沢万平ホテル(同1894年)、東京ステーションホテル(同1915年)、奈良ホテル(同1909年)、ホテルニューグランド(同1927年)の6施設で構成する。その大半が、明治時代から昭和初期に至る開業から、今日まで激動の時代を生き抜いてきた、時代の証人とも言うべき名ホテルたちである
▼実際に足を運んで、クラシックホテルならではの「寛ぎ」や「安らぎ」に魅了される人は多いだろう。その静寂と瀟洒なたたずまいに、一瞬時が止まり、タイムスリップしたような感覚にとらわれる。施設の老朽化や維持管理など存続には多くの課題も伴うが、貴重な産業遺産として長く後世に残していきたい。

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