コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

  1. ホーム
  2. コラム「復・建」

2016/01/19

デビット・ボウイがくれたもの

▼先週11日夜のニュースで流れた英ロック歌手デビッド・ボウイの訃報には、ただただ呆然とした。69歳の誕生日だった今月8日に最新アルバム「★(ブラックスター)」をリリースしたばかりで、しかも個人的にはちょうど訃報を聞く直前にこのアルバムをネットで注文したタイミングだったので、まさに耳を疑う驚きだった
▼1年半に及ぶガン闘病の末に、家族に見守られて安らかに亡くなったというが、創作への意欲は最後まで衰えを知らなかったようだ。10年ぶりに発表された前作「ザ・ネクスト・デイ」(2013年)で健在ぶりを示し、それに続く今作によって、文字通りトップアーティストとして生涯現役をまっとうした。あっぱれというほかはない
▼音楽にとどまらず、ファッションや文学、映像などアートの多方面に与えた影響力は計り知れないものがある。2000年には「20世紀で最も影響力のあるアーティスト」にも選ばれている。俳優としても活躍し、坂本龍一さん、ビートたけしさんも出演した1983年公開の映画「戦場のメリークリスマス」(大島渚監督)での英軍将校役の演技も忘れがたい
▼音楽だけをとってみても「変化と挑戦の美学」を徹頭徹尾貫いた。70年代初めには大人が顔をしかめるけばけばしさでグラム・ロックの最前線を走り、やがてアメリカ時代、ベルリン時代と作風やテーマを変えつつ、世界的なロックアーティストとしての評価を得た。バンド活動も含めた今日に至るまで、その一挙手一投足に注目してきたファンにとって、その喪失感は簡単に言葉では言い表せない
▼筆者がボウイの楽曲と出合ったのは、それこそ若かりし十代半ばの頃だった。リアルタイムで「ジギー・スターダスト」や「アラジン・セイン」を聴けた僥倖を何と言おう。洒落ではないが、学校から自宅に戻った土曜の午後に聴く「ドライブ・インの土曜日」には、言いようのない幸福感があった。今考えても、青春の一ページを鮮やかに彩るかけがえのない瞬間だった。

会員様ログイン

お知らせ一覧へ