コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2016/03/08

ネット社会での著作権法

▼現代のネット社会では著作権法もその解釈が複雑になっているようだ。著作権法に詳しい弁護士の中川達也氏によれば、報道機関もネット上の情報の利用には十分注意を払う必要があると指摘する
▼報道機関が著作物を利用する場合は、「報道利用」「引用」のいずれかの要件を満たす必要があるが、これはネット上の情報に関しても同様だ
▼「報道利用」とは、「事件を構成する著作物」「事件の過程において見られ、聞かれる著作物」のいずれかに該当する著作物であれば、報道の目的上正当な範囲内で利用できることを言う
▼「事件を構成する著作物」とは、事件の主題となっている著作物のことで、たとえば「ピカソの絵画が落札された」という「事件」を報道する際にその絵画の写真を掲載する場合がこれにあたる。また「事件の過程で見られ、聞かれる著作物」とは、皇族が美術展を訪れたという「事件」を写真付きで報道する際に、写真の背景に美術作品が写りこむ場合などを言う
▼一方の「引用」とは、①主従関係(質的・量的に自分の著作物が主である)②明瞭区分性(カギ括弧でくくるなど引用部分を明確にする)③出所の明示(出典等を明示する)④他人の著作物を引用する必然性――が要件となる
▼最近の事例では、軽井沢スキーバス事故で亡くなった方を紹介するために、多くの報道機関がフェイスブックなどから入手した被害者の写真を紙面に掲載するなどして物議をかもした。中川氏によれば、著作権法上、引用や報道利用として無断で利用できるかが焦点だが、今回のケースは問題ないとの意見が主流だという。一般に死者に肖像権はないとされる一方で、遺族の「敬愛追慕の情」は法的に保護される。そうしたことを踏まえても、今回のケースは、おおむね遺族の心情を害するものではなかったと判断されるようだ
▼ネット社会の進展で著作物の利用・引用では今後も様々な問題が生まれるだろう。法の基本を押さえつつ、ケースバイケースで慎重に取り扱う必要を痛感した。

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