コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2016/08/02

金閣「幻の塔」?相輪の破片出土

▼歴史が時とともに忘れられていくものであるなら、歴史学はそれを掘り起こす作業に違いない。京都・金閣寺で北山大塔のものとみられる相輪の破片が見つかったというニュースに、そんな思いを強く抱いた
▼室町幕府3代将軍足利義満が1404年に建築を開始したが、完成前の14年に落雷で焼失したといわれ、これまで遺構が見つからず幻の塔とされてきた。画期的であると同時に、歴史のロマンを感じさせる発見だ
▼驚きは何といっても想定されるその規模だ。北山大塔より前に義満が相国寺に建てた七重大塔が高さ約109mで、国内で最も高い木造建築物だったが、北山大塔はそれに匹敵する規模と推察される。現在なら神戸ポートタワーと同等、千葉ポートタワー(125m)ともそう変わらぬ巨塔が京の町にそびえたっていた。その場に居合わせたなら、壮観さに目を見張ったことだろう
▼今回見つかった相輪は、塔の最上部から突き出た装飾部分で、破片は輪が9つ重なる九輪の一部とみられる。金閣から200m東の境内にある室町時代の溝で3個見つかった。復元すると相輪は直径約2・4mになることから、巨大な塔だったことは間違いない。塔の土台はまだ確認されておらず、今後の調査が待たれるところだ
▼義満が自ら住んでいた北山殿(現在の金閣寺)に北山大塔の建築を始めたのは、相国寺の七重大塔が1399年に落雷で焼失したためと考えられている。同じ落雷による消失という点では因縁すら感じさせる。当時の皇族の日記には「北山大塔は七重で、落雷で燃え、僧らが懸命に消火したが消失した」とあるが、義満自身は08年に死去しており、焼失する8年前に没している。新たな大塔の完成を夢見ていたに違いない
▼貴重な遺産は失われてしまえば二度とよみがえることはないが、せめて今回の発見を契機に、幻の塔の実態が解明されることを望みたい。いにしえから高い技術力を誇った日本の木造建築物の価値を再認識するきっかけとなれば、なおさら意義深い。

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