コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2016/12/20

文化遺産登録に佐原大祭

▼地域色豊かな日本の祭礼「山・鉾・屋台行事」(18府県の計33件)がユネスコの無形文化遺産に登録されることに決まったが、この中には、江戸時代から300年の伝統を誇る本県・香取市の「佐原の大祭」(佐原の山車行事)も含まれる。地元は登録決定の喜びに沸くが、地元の宝を見つめ直す機会ともしたい
▼大祭は江戸時代、利根川舟運の拠点となった商人の町「佐原」の繁栄を背景に始まった。佐原囃子を奏でながら、高さ5m近い大人形と関東彫りの豪華な彫刻に飾られた総ケヤキ造りの山車が練り歩く、江戸情緒豊かな祭りとして知られる。7月の夏祭りが八坂神社祇園祭、10月の秋祭りが諏訪神社秋祭りで、夏祭りに10台、秋祭りに14台の山車が引き回される
▼山車を引くには約50人が必要だが、人口減と高齢化により20~30歳代の若手確保が課題になっている。期間中に帰省する人もいるが、多くの町会が他からの応援に頼っているのが現状だという
▼ユネスコの遺産事業はそもそも保護を目的とした制度であり、無形遺産への登録も、各国が自国の遺産を将来にわたり保護することの国際公約を意味している。地元が観光振興に期待を抱くのは当然としても、後継者育成や映像記録の保存など取り組むべき課題も忘れてはならない▼佐原の大祭では何といっても、山車の上部に飾られた大人形に目を奪われる。江戸・明治期の名人人形師によって製作されたそれらの人形は、神武天皇や菅原道真、素戔嗚尊、源頼朝、日本武尊など歴史上の偉人を中心に、いずれも威風堂々として迫力満点だ
▼筆者も以前、この大祭を見学したことがあるが、決して広いとはいえない小野川周辺の歴史的景観地区で、数え切れない若衆(若連)らが山車を引き回す様子は、夕刻の薄暮も手伝って何とも幽玄だったことを覚えている。同時に、300年の長きにわたり連綿と続いてきた伝統文化の重みも感じさせられた。地域一体で今日まで維持してきた地元の熱意に敬意を表しつつ、次世代への継承を期待したい。

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