コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2016/12/06

痛み分かち合いたい伊中部地震

▼近年の世界的な異常気象を見るにつけ、自然災害はどこでどう起こるかわからないことを痛感させられる。とくに地震は、学術的に予知が不可能と言い切る学者もいる。南海トラフ地震や首都直下地震などの切迫性が叫ばれるなか、地震発生の恐れのない地域は全国どこにもないと考えるべきだろう
▼日本以外の国では8月に発生したイタリア中部地震が記憶に新しい。アペニン山脈中の盆地に所在するアマトリーチェは、この地震で「町が消えた」と言われるほどの被害を受けた。さらに同じ中部のノルチャ近郊でも10月末にマグニチュード6・6の地震が発生した
▼被災地がどこであろうと被害の痛ましさに変わりはないが、日本に何かとつながりの深いイタリアとなればなおさら気にかかる。日本と同じ細長い地形で、気候も温暖、四季もはっきりしているなど共通点も多い。食文化やファッションブランドなどでも何かと親近感を抱かせる国だ
▼今回のイタリア中部地震の被災地アマトリーチェの名を耳にしたときも、どこかで聞き覚えのある気がした。イタリアの代表的なパスタソース、アマトリチヤーナに関係があるのではと思っていたら、案の定、この街の名に由来するという。豚頬肉の塩漬けとペコリーノチーズ、トマトを使ったローマ料理の代表的なソースだ
▼アマトリーチェの街は風光明媚な観光地として知られ、歴史的な建造物も多い。その多くが8月の地震で甚大な被害を受けたことは、返す返す残念だ。一方の街ノルチャも黒トリュフと生ハムが特産の観光地で、アマトリーチェと震源からの距離がほぼ同じだった8月の地震では大きな被害はなかったものの、10月末の地震では多数の建物が倒壊したという
▼ペルージャ在住の日本語教師の方の話に「今回大きな被害を受けた地域が、いかにイタリアにとって精神的にも文化的にも大切な地域であったかをご理解いただきたい」とあった。地震で打撃を受けた歴史の街に思いを馳せ、同じ地震国としてその痛みを分かち合いたい。

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