コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

  1. ホーム
  2. コラム「復・建」

2017/02/14

舞の海が語る「可能性への挑戦」

▼大相撲初場所で初優勝した稀勢の里が19年ぶりの日本出身横綱に決定したこのタイミングで、NHK大相撲解説者の舞の海秀平氏による講演を聴く機会があった。現役時代には「平成の牛若丸」「技のデパート」と呼ばれ、その小柄な体格で土俵を沸かせた同氏が「夢は必ずかなう―可能性への挑戦」と題する演目で、自身の相撲観やエピソードをユーモアたっぷりに語った
▼氏は相撲について、伝統文化、伝統芸能であり、神事でもあるとしたうえで、武士道精神など様々な要素を融合させながら1400年を奇跡的に生きてきたと説明。その意味で相撲には日本の歴史、風土、習慣が詰まっていると述べた
▼一方で、相撲は興行としていかに観客を楽しませるかという側面があり、「昭和に入って勝負を争うスポーツとしてとらえられ、公平公正さが求められるようになったが、本来、他のスポーツとは比較できない特殊で複雑なもの」と表現した
▼自身の現役時代には「買っても威張らず、負けてもひがむな」と教えられたことを明かし、相撲を見せているのではなく見ていただいているという気持ちで土俵に上がることが大事だと説く。さらに大相撲の魅力は、勝っても負けても感情をあらわにせず、静かに土俵を去っていくところにあるとし、何よりも感謝の気持ちが必要と述べた
▼自らの経験から「大きい人にも必ず弱いところがあり、小兵力士は自分の強いところをいかに相手の弱いところにぶつけていくかがポイント」と、その極意を披露。現在の日本出身力士については、外国人力士のようなハングリー精神に乏しく、体重だけに頼っているきらいがあると苦言を呈する
▼最後に氏は、かつて自身の身長が新弟子検査の合格基準に4センチ足りず、美容外科手術で頭頂部にシリコンを入れて検査に臨んだエピソードを披露。その傷跡はいまでも痛むが、後悔はないと断言。「人生とはちょうどよくしたもので、何かに挑戦するためには何かを犠牲にしなければならない」と実感を込めて語った。

会員様ログイン

お知らせ一覧へ