コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2017/04/18

カバー曲で知る個性

▼オリジナルの楽曲に触れる機会は少ないが、後のカバー曲によってそれらをよく知るアーティストがいるものだ。米国のギタリストで歌手のチャック・ベリー氏は、筆者にとってそんな存在だった。ロックンロールの創始者の一人として知られる同氏が先月、米ミズーリ州の自宅で亡くなった
▼「ジョニー・B・グッド」「スイート・リトル・シックスティーン」「ロール・オーバー・ベートーベン」など、ロック史に残る名曲を残した。ロック好きならタイトルを聞くだけで頭の中で鳴り出すほどなじみ深い楽曲ばかりだが、さて自分がそれらを初めて聴いたのはと考えると、やはり多くがカバー曲だった。例えばビートルズ、ジミヘンやロッド・スチュワートという具合に
▼多くのミュージシャンに影響を与えた意味では別格だろう。ジョン・レノンは「ロックンロールの名前を変えるならチェック・ベリーと呼べばいい」と語ったと伝えられる。ロック文化を先導した大物たちも憧れた存在だった
▼ローリング・ストーンズも「彼はロックの真のパイオニアで、すばらしいギタリスト、歌手、演奏者だっただけでなく作詞の名職人だった」との声明を出した。ブルース・スプリングスティーンも「ロックの最も偉大な実践者、ギタリストであり、史上最高のロックの作家だった」とツイッターで発信した
▼これらのコメントにあるように、ギターの技やライブ演奏の巧みさに加えて、50年代の若者の心情を描いた作詞家としても知られた。ボブ・ディランは「ロックンロールのシェイクスピア」とまで形容している。日本人にはなかなか伝わりにくい部分だが、改めてその歌詞を見ると、多くはティーンエイジャーの日常を題材とし、シニカルな視点が際立つ曲もある
▼もう一つ、演奏しながら腰を落として歩く「ダック・ウォーク」も記憶に鮮明だ。その多くをカバー曲によって聴いてきた者にも、あのトレードマークがまざまざとよみがえるのは、やはりオリジナルが持ちうる個性ゆえのことだろう。

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