コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2017/07/11

赤ちゃんパンダの成長願い

▼上野動物園のジャイアントパンダの赤ちゃん誕生は、久々に明るいニュースだった。生後1か月近く経ち、性別も雌と判明、体も白と黒のパンダカラーになり、体重も順調に増えているという。この調子ですくすくと成長してもらいたいものだ
▼赤ちゃんを産んだ「リーリー」と父親の「シンシン」は、上野では初めて中国から借り受けたパンダだが、そのレンタル料が2頭で年間95万ドルにのぼることも忘れるわけにはいかない。賃貸契約期間は10年間で、借主の東京都は期間内に合計でおよそ10億円(1ドル=100円換算)を支払う計算になる。希少で人気の高いパンダとはいえ、決して安いとは言えない金額だ
▼中国以外の国で生まれた子パンダの所有権はすべて中国にあることから、今回生まれた赤ちゃんパンダも2年をめどに中国に返されることになっている。また、寿命以外の理由でレンタル中のパンダが死んでしまった場合は数千万単位の賠償金がかかるそうだ
▼通常わかりやすいようにレンタル料と言われるが、名目は「パンダの共同研究費」および「パンダの生息地保護のための資金」で、繁殖の共同研究のために中国から借りている形だ。それほどパンダの繁殖能力は低く、動物園などで人工授精をさせないと絶滅してしまう可能性が高いのも事実だ
▼シンシンの出産は2012年以来で、上野動物園でのパンダ誕生は5例目となる。12年には雄の赤ちゃんが誕生したが、6日後に肺炎で死亡。13年は偽妊娠だった。それ以前にも上野動物園では、1985年に誕生した日本初のパンダの赤ちゃんチュチュが母ホアンホアンの下敷きになり、わずか45時間で死亡するという悲しい事故も起きた。これらのニュースを耳にするたび、パンダ繁殖の難しさを思い知らされた記憶がある
▼赤ちゃん誕生までの関係者の苦労は想像に余りある。園長が「感無量」と話した気持ちもよくわかる。ここはレンタル料の高さを頭の片隅にとどめながらも、赤ちゃんの成長を願って静かに見守りたい。

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