コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2018/03/27

寂しいギブソンの倒産危機

▼米大手ギターメーカーのギブソンが経営危機に瀕している。その大きな理由が若者のロック離れというから、青春時代からロック音楽をこよなく愛してきた筆者には寂しい限りだ。隔世の感を禁じ得ない
▼ギブソンと言えば、エレキギターの「レス・ポール」で知られる。レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジやガンズ&ローゼズのスラッシュ、カルロス・サンタナなど数々の名ギタリストたちに愛用されてきた。丸みを帯びたその造形から繰り出される重厚な響きに魅せられたファンは多いだろう
▼ギブソンは1894年に楽器職人オービル・ギブソンが創業。売上高は約1300億円だが、主力のエレキギターの販売が振るわず、オーディオ機器にも事業を広げたが、債務が膨らみ、あと半年のうちに債務不履行に陥る苦境に立たされている
▼影を落とすのは若者のロック音楽離れだ。米国のインターネット音楽配信サービスでは再生上位曲の大半がヒップホップやR&Bなどのジャンルで、こうした曲ではギターが前面に出るのはまれだ。楽器を始めようとする若者がギターに関心を持つ機会は確実に減りつつある
▼ギターはかつてロック音楽の花形だった。その中でも「レス・ポール」は米フェンダーの「ストラトキャスター」と双璧をなし、多くのギタリストたちが名演を残した。一言でいえば、ストラトキャスターのシャープで乾いた伸びのある音色に対し、レス・ポールは腰があり湿った重量感あふれる音色という印象がある
▼まさにロックの申し子的なレス・ポールだが、不振はそのギブソンだけではなく、フェンダーにも及び、12年には株式公開の取りやめに追い込まれている。エレキギター自体の販売が、米国では05年の約160万台から10年間で約110万台まで減少したとの調査もあるそうだ
▼個人的には、大学受験の合格祝いに親から黒のレス・ポールを買ってもらった懐かしい思い出がある。いまでは宝の持ち腐れになっているが、久しぶりに手に取って感慨にふけってみたい。

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