コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2018/11/16

「日本の台所」移転

▼築地からの引っ越しも終わり、豊洲市場が11日開場した。移転を巡る紆余曲折もあって、一連の動きは大々的に報道された。電動運搬車「ターレ」が約2100台も早朝に移動する引っ越しの様子は、まさに「日本の台所」の移転らしく、都政史上まれに見る大移動とも言われる
▼関係者の胸には様々な思いが去来したことだろう。何といっても開設から83年の歴史に幕を閉じたのだから、言葉にできない複雑な思いもあったはずだ
▼築地市場の起源は1603年頃にできた日本橋の魚河岸にさかのぼる。かつて「日に千両の落ちどころ」とも評された日本橋の市場が関東大震災で焼失し、京橋の青物市場とともに移転、1935年に開場した。2001年に豊洲への移転を決めたが、土壌汚染対策などで迷走。16年11月に開場する予定だったが、同年8月に延期を決め、開場が2年遅れた
▼豊洲市場は、築地市場の1・7倍にあたる約40haの広大な埋め立て地に約5700億円をかけて整備。「開放型」の築地市場とは違い、外気から遮断され、24時間空調で厳密な温度管理ができる「閉鎖型」構造が特徴だ
▼水産卸売場棟では室内温度を一定に保ち、競り落とされた水産物は屋外の空気に触れず水産仲卸場棟へ移動。トラックバースでは冷凍・冷蔵トラックの後部が建物内に直接搬入できるなど、産地から市場内、さらに店頭まで商品の低温管理が途切れない「コールドチェーン」が実現する
▼土壌や地下水の汚染では専門家が安全を確認したとはいえ、引き続き不安払拭への努力が必要だ。一方で築地市場の老朽化が限界まで達していたのも事実で、市場内には多数のネズミが生息。捕獲作業が進められているものの、今後の施設解体で築地から逃げ出したネズミが北側の銀座地区や対岸の勝どき、晴海地区にまで移動する恐れも指摘されている
▼いずれにせよ、豊洲市場には「日本の台所」の役割を立派に受け継いでもらいたい。築地で築かれたブランド力をいかに引き継いでいくかが今後の課題となる。

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