コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2011/12/05

ロック音楽に見る思いやり

▼ロック音楽も変わった。英国のバンド「コールドプレイ」がタンバリンを振っていたファンに「やめてほしい」と注意したというニュースに、改めてそう思った
▼ロンドンのチャリティーイベントでコールドプレイのクリス・マーティンが「サイエンティスト」の演奏中、ある女性ファンのタンバリンの伴奏に耐えられず、演奏を中断して優しく語りかけた。「ごめん、ちょっとこの曲はタンバリンを使うような曲じゃないんだ。レコーディングの時にはタンバリンを試したけれどボツになった。悪く思わないでほしい」
▼すべてのファンを思いやる気持ちが伝わり、人柄が滲みでる。その模様を動画で見たが、この静かな名曲を邪魔されたにもかかわらず、いらだつ素振りすら見せず、切々と諭すかの姿には、熱いものが込み上げてきた
▼ロックコンサートにおける事件といえば、古くは1969年の「オルタモントの悲劇」が思い出される。ローリング・ストーンズの演奏中に暴動が起き、殺人事件にまで発展した。それに比べれば、今回の件は“一服の清涼剤”に感じる
▼作家の村上龍氏はかつて「ロックは市民権を得てダメになった」と言った。確かにロックは破天荒さを失い、アーティストも優等生的になった。しかし、物事が時とともに移ろうべきものなら、それはよき変化に違いない。こういう時代だからこそ、音楽くらいは夢を与え続けてほしい
▼コールドプレイのクリスは舞台上からこう付け加えたという。「次の曲はタンバリンにばっちりの曲だから、思いっきり盛り上がってくれ」と。

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