コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2020/02/26

彼を知り己を知るには

▼「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」の故事のとおり、冷静に構え、難局に当たりたい。しかし「彼」が何者かはっきりしない現状では、多くの困難や不安が伴う
▼新型コロナウイルスが世界を揺るがし、蔓延の兆しを見せている。この3連休も春の陽気で天候に恵まれたが、出控える人も多かったのか、街中の人出は少な目だった。大規模なイベントや集会など開催自粛の動きも出始め、経済不安も増している
▼そもそもコロナウイルスの仲間は、昔からさまざまな哺乳類や鳥類にそれぞれ「お気に入りの居場所」を確保してきたという。通常の「風邪」と呼ばれる病気も、こうしたウイルスの一部により引き起こされるものだ
▼「生命」の定義からすれば、ウイルスは、自力で生きていく「細胞」を持たないことから生き物とは言えない。このため感染することで、他の生き物の宿主となって病原体として振る舞うことがある
▼ウイルスの立場からすれば、居場所を提供してくれる宿主にダメージを与えすぎるのは賢明でなく、次の宿主のところまでたどり着くことが望ましい。ただしそれは相手が「馴染み」である場合だ
▼神里達博・千葉大学教授によれば、新型コロナウイルスにもそうした良好な関係の宿主(動物)が存在していたはずだが、なぜかこれまで縁のなかった人間にとりついてしまい、勝手のわからない相手に対して暴力性を発揮しているのだろうと分析する
▼一般にウイルスは遺伝子を変えながら、より宿主に優しい方向へ進化し、多くのコピー(子孫)を作り出していく性質があるという。ウイルスがなくならないのであれば、せめてそうした方向に展開していってもらいたい
▼一方で「己を知る」ことも重要だ。私たち一人一人にできることは限られているかもしれないが、最低限「うつらない」「人にうつさない」など、さまざまな配慮が必要になる。一言で言えば「弱者」の視点に立って考えるということだろう。一日も早い終息へ向けて、各自が心して行動したい。

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