コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/07/03

注意要する「津波地震」

▼今でこそ英語の辞書にも載るようになった「tsunami(津波)」という言葉だが、この言葉を国際的に広めるきっかけになったのは、小泉八雲の小説「生神様」だといわれる。津波の来襲に気づいた実業家が、自分の田の稲の束に火を放って村人たちを救う話で、火事と思った村人は、火を消そうと高台に集まり救われた
▼小説のモデルは1854年の安政南海地震で、紀伊半島から四国沖を震源とするマグニチュード8・4~8・5の巨大地震だが、小説では、誰も揺れに気づかないほどの「長い、ゆっくりとした、ふわっとした揺れ」と記されている。小泉八雲は1896年の明治三陸地震の伝聞をもとに、このような描写をしたと考えられている
▼実際、明治三陸地震は震度3程度の揺れだったが、約30分後に大津波が押し寄せ、住民2万人以上が犠牲になった。揺れは小さくても大きな津波が襲ってくるこうした地震は、1972年に「津波地震」と名付けられた。地下の断層破壊がゆっくり進むと、周期の長い地震波が多く出され、小刻みな揺れは感じにくくなるものの、海底の隆起が大きいと、海水が持ち上げられて大きな津波が起きる仕組みだ
▼私たちはいまも東日本大震災の余震に悩まされているが、昨年3月の本震に比べて大した揺れではないから、津波は大丈夫だろうと、つい短絡的に考えがちだ。揺れが小さい津波地震では、地震発生後約3分で出される気象庁の津波予測も小さく見積もられる恐れがある。揺れの大小にかかわらず、常に津波の危険を肝に銘じておきたい。

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