コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2020/12/02

忍び寄る人口減少

▼有史以来増え続けてきた世界の人口がピークに達し減少に転じるシナリオが、各方面の推計から見えてきた。従来の予測を下方修正するものが多く、人口減少への足音はますます間近に迫っている
▼国連が公表した予測では、人口は当面伸び続けるものの、2100年に109億人でピークに達する可能性があり、今世紀中に減少に転じる確率も27%あるという
▼さらにこれより早く人口減少が始まると予測する研究者も少なくない。米ワシントン大の研究チームは、2064年の97億人がピークで、今世紀末には88億人まで減少するとの試算を出した。またピークはもっと早く、2050年頃との見方もある
▼ピークアウトのタイミングは推計によってかなり差があるが、タイミングを早めて考える研究者が増えている。人口減少に転じる最大の要因は、多くの途上国、とくにアフリカで出産数が予想以上の速さで減っていることにある。背景には、女子の教育や避妊の知識の普及がある
▼地球の人口減少は、資源の枯渇が減り、温暖化を防ぐ点でプラスに働くが、国の活力や影響力、社会保障制度の維持などからすればマイナス要素も大きい。とりわけ人口減少とともに「若さ」が失われ、高齢化が進む事態が最大の懸念材料だ
▼「若さ」の物差しには、全国民を年齢の高い方あるいはい低い方から順に並べて、真ん中に来る人の年齢である「年齢中央値」が使われる。1980年には米国の年齢中央値30.0歳に対し、中国はわずか21.9歳だったが、40年後の今年には逆転し、米国38.3歳、中国38.4歳。さらに今世紀末には米国45.5歳、中国49.7歳と差は広がる。中国の高齢化は避けられそうになく、今世紀中最大の課題になるかもしれない
▼日本はと言えば、2020年時点ですでに48.4歳に達しており、人口ランキングの上位11か国中で最も高い。少子高齢化が一段と進む日本では、国の強力な施策や経済の好転、国民意識の変化がない限り、残念ながら厳しい先行きしか見えてこない。

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