コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/02/09

学ぶべき点多い大統領演説

▼米大統領選といえば、どこか「お祭り」めいた華やかさが付きまとうものだったが、今回はジョー・バイデン大統領の就任式に至るまで、まったく様相が違った。南北戦争以来と言われる分断が際立ち、その根深さが浮き彫りになった。就任式直前には首都ワシントンの連邦議会議事堂でトランプ支持者による暴動まで起きた
▼トランプ氏は就任式も欠席。退任する大統領が就任式を欠席するのは152年ぶりという。最後まで異例づくめの大統領選だった
▼そんな中で挙行された就任式は、日本では深夜の中継だったため、すべてを見た人は少なかったようだが、1月22日付朝刊には日本語訳の全文が各紙に並んだ。他国の大統領の就任演説にこれだけ紙面を割くのは、やはり米国ゆえだろう。いぜん米国の影響力の大きさを物語る扱いでもあった
▼各紙に載った演説の日本語訳について、ジャーナリストの池上彰氏が比較、論評していた。その訳し方によってずいぶん印象が違うと驚かされた。「です、ます」調で訳すか「である」調で訳すかだけで大きくイメージが変わる
▼冒頭近くの一部を見ても、ある新聞は「今日、私たちは大統領候補者の勝利ではなく、大義の、民主主義の大義の勝利を祝福します」。別の新聞は「私たちが今日祝うのは候補者の勝利ではなく、大義、すなわち民主主義の大義だ」。さらに「我々はきょう、一候補者の勝利ではなく、民主主義の大義の勝利を祝っている」と訳した新聞もあった
▼どの訳が好みかは人それぞれだろう。池上氏は最初の訳文が優しい口調でバイデン大統領の人柄をほうふつとさせるとしつつ、校長先生が生徒に話すようなイメージもあると評した。一方、「である」調だと格調は高くなるが、こなれていない印象もあるとした
▼池上氏は最後に「それにしても、日本の総理の演説との格調の差は、どうにかならないものでしょうか」とチクリと皮肉っている。大国の権威も地に落ちたかに見える昨今の米国だが、それでも学ぶべき部分はまだ多い。

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