コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/07/26

アメリカザリガニの未来は

▼子どものころ野山を駆け回った経験がある者なら、アメリカザリガニは身近な存在だったに違いない。釣って間近にすれば、真っ赤な姿で大きなハサミを振り上げて威嚇する姿は、なかなかの迫力だった。生き物に触れ、自然の面白さを教えてくれる存在でもあった
▼とはいえ、在来種の脅威となり、農作物などへ被害を与えることから、昔から〝悪役〟のレッテルを貼られてきた。しかし、外来生物法で定める特定外来生物に指定されていないため、規制の対象外だった
▼そもそもアメリカザリガニは1927年、ウシガエルのえさ用に原産地の北米から持ち込まれ、日本各地の池などで繁殖した。現在では47都道府県に分布する。泥にもぐったり、短時間なら陸上を移動できるため除去しにくく、繁殖力も強い
▼雑食であらゆる動植物を食べ、水草を切断し、水生昆虫や魚の産卵場所などにも悪影響を及ぼす。急増した池では、水が濁ることがあり、研究者からは「ザリ色の水」とありがたくない名前まで付けられる厄介者だ
▼そのアメリカザリガニがアカミミガメ(ミドリガメ)とともに、このほど環境省が、生態系への影響が深刻な外来種として屋外で繁殖しないように規制する方向で検討を始めた。ただし、特定外来生物に新たな区分を設け、ペットとして飼うことは認め、輸入や販売、屋外への放出などを禁止する
▼つまり、飼育は〇だが、逃がすのは×となる。子どもが遊びで釣り上げたり、知らずに捕まえて家に持ち帰ったりした場合にはどう対処するかなど、指定には問題も残り、個別のケースについては今後さらに詰めるという
▼約1世紀前に日本へ持ち込まれたのは、いわば人間の都合によるものだ。大きな被害に気づいたときに手遅れとなっては問題だが、かといって一気に駆除されてしまうのも、子どものころ身近に接した者としては何とも複雑な思いに駆られる。駆除するだけでなく、どう生態系のバランスをとっていくか、それも私たち人間に課せられた責務と言えよう。

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