コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/08/31

コロナと野外フェス

▼コロナ禍で野外ロックフェスティバルが苦境に立たされるなか、今から半世紀前に日本での先駆けとして開かれた大規模ロックフェスが注目を集めている。1971年8月に神奈川県箱根町の芦ノ湖畔で開かれた「箱根アフロディーテ」だ。このときトリを務めた英国の大物バンド、ピンク・フロイドの映像が2018年に発見され、このほどブルーレイ化して発売された
▼当時中学生だった筆者は洋楽に目覚めたばかりで、現地には駆けつけられなかったが、音楽雑誌などで熱心にチェックした記憶がある。海外の大物が出演する催しとしては先駆的だったこともあり、自然の中で聴くピンク・フロイドの演奏には興味津々だった
▼初日の演奏中、芦ノ湖特有の霧がにわかに立ち込め、荘重な音楽と呼応するように神秘的な光景が広がったことは、今でも語り草だ。数年後ならその場に居合わせることもできたのではと、残念に思ったものだ
▼ピンク・フロイドが1972年にイタリアのポンペイ遺跡で演奏したライブ映像を後年になって観たときも、その幻想的で神秘的な光景に箱根アフロディーテのことを思い起こした
▼箱根アフロディーテは、69年に米国で開かれ、平和や反戦などを象徴する社会現象となった屋外ロックフェス「ウッドストック」に、ニッポン放送の社員が触発されて、実現した。経費や運営面などのリスクは大きかったようだが、ロック黄金期を象徴する催しとして今も高く評価されている
▼こうしたカウンターカルチャー的なイベントにもなりうる屋外フェスだが、このコロナ禍では開催に風当たりも強い。緊急事態宣言のなか、県外から多くの人が訪れることが懸念されていた「フジロック・フェスティバル」も今月20~22日に新潟県湯沢町で強行された
▼英国で今月中旬に開かれた音楽祭では、参加者の約1割に当たる約4700人が新型コロナに感染した可能性があると報道された。コロナの影響がどこまで広がり続けるのか、失われるものの大きさに頭を抱えずにはいられない。

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