コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2012/09/18

風化させてはならぬ教訓

▼東日本大震災から1年半が経った今月11日、東北各地で鎮魂と復興への願いを込めた祈りがささげられた。復興は道半ば、いやそれ以下だろう。先の見えない闘いを強いられている感すらある
▼海の向こうの米国でも同日、9・11の追悼行事が行われた。約3千人の命が奪われた同時多発テロから11年。しかし10年の節目だった昨年とは打って変わって、今年の式典では、政治家による追悼の言葉もなく、遺族らが名前を読み上げるだけに終わったそうだ。9・11の記憶が急速に色あせている感は否めない
▼大詰めを迎えた大統領選でもテロの脅威はほとんど語られず、容疑者たちを裁く法廷への関心も薄れているという。同時多発テロの背景にあった反米感情の解消や、国際テロ組織の温床となる貧困の撲滅といったオバマ政権の約束も手つかずのままだ
▼そんな現状への警鐘でもなかろうが、同じ11日にはリビア米領事館が襲撃され、駐リビア大使ら4人が殺害されるという痛ましい事件も起きた。双方に言い分はあろうが、暴力の連鎖を断ち切るのは、やはり粘り強い議論と対話しかない
▼翻って東日本大震災についても、この先5年10年と経ったときの、記憶や意識の「風化」が心配だ。自然災害とテロとの違いこそあれ、その心配に違いはない。過去の津波災害の教訓が生かされていれば、東日本大震災の被害もいくばくか軽減できたのではないかという悔いがいまも残る。どんなに甚大な災害もいずれは過去のものとなる。だからこそ、導かれた教訓は「風化」させることなく後世に伝えていきたい。

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