コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/10/12

変わる住環境・生活様式

▼コロナ禍で私たちの生活は様変わりした。6月下旬から始まった第5波が収まりつつある今も、再度のリバウンドなど気の抜けない状況が続いている。コロナ禍がいずれ去っても、いつまた新たなパンデミックに襲われるとも知れない。1918年から20年にかけて猛威を振るったスペイン風邪を思い返すまでもなく、人間の歴史はウイルスとの闘いと言われる所以だ
▼コロナ禍では衛生意識の高まりに加え、急速に広がるテレワークを背景に、人々の住空間への要望もずいぶん変化した。自分の空間がほしい、ウイルスを入れたくないと考えるのは誰しも同じだが、共に過ごす時間が増えた家族との距離の近さにさえ悩む人が多いようだ
▼これまで仕事を家に持ち込んだことのない人にとっても、戸惑うことが多かっただろう。子どもが騒がしくて仕事に集中できないため、ウォークインクローゼットに目をつけ、中の服などを処分し、キャンプ用のランタンや椅子を持ち込んでワークスペースを確保し、机の代わりに棚を利用した、という苦労話も耳にした
▼住宅や生活関係のシンクタンクによれば、在宅勤務での困りごとでは「仕事に適した部屋がない」が最も多かった。急ぎリノベーションに踏み切った人もいるが、そう手回しよく実行できる人ばかりではない
▼別の調査で、昨年5月の緊急事態宣言後に「必要と思うようになった住宅・住宅設備」について聞いたところ、トップが「通気・換気性能に優れた住宅」で、以下「通信環境の充実」「宅配ボックスの充実」「除菌対応エレベーター」などと続いた。当然ながら、いかにウイルスを自宅に持ち込まないかに神経をとがらせた人が多かった
▼住宅設備メーカーによると、ワークスペースの確保以外にも、外から帰ってきてすぐに行える玄関前の洗面台設置などの要望も増えた。住宅の場所についても「密」を避けるため、郊外の戸建てに人気が集まっていると聞く。衛生観念が高まり続ける未来には、どんな生活の風景が待っているのだろうか。

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