コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

  1. ホーム
  2. コラム「復・建」

2021/10/19

潮目変わった千葉NT

▼半世紀以上前に建設構想が立ち上がり、苦難の連続だった千葉ニュータウン(NT)。一時は「足なしの陸の孤島」などとも言われたが、2000年代に入って潮目が変わった。印西市は12年から7年連続で経済誌の「住みよさランキング」で1位になるなど、様相が一変した
▼鉄道が早い段階で整備され、サラリーマン世帯が次々と入居した多摩NTと比較されることが多かったが、今では多摩NTのほうが建物の老朽化や住民の高齢化、商店街の空き家などの深刻な問題を抱えている
▼一方で千葉NTは、いまやファミリー層に人気で、街として成長し続けている状況から見ても、時代の流れを見通すというのは何とも難しい
▼千葉NTは印西市と白井市、船橋市にまたがり、北総鉄道と国道464号沿いに広がる新興住宅都市で、広さが約1900haに及ぶ。とはいえ、当初の事業計画では2912ha、計画人口34万人とされていた。ほぼ半世紀前の1970年初めに造成工事が開始されたが、用地買収が難航し、鉄道、道路も未整備の状況が続いた
▼計画も86年12月には1933ha、計画人口17.6万人に縮小された。都心直結の鉄道が実現したのは、北総線新鎌ケ谷~京成高砂駅間が開通した1991年3月で、住民はそれまで通勤や買い物の不便さに悩まされてきた
▼しかし2000年代に入り、大型商業施設が進出すると状況が好転。売れ残った住宅用地を事業用地に転換したことで、商業施設や物流センター、インターネット時代に不可欠なデータセンターなどの進出が相次ぎ、新たな発展段階を迎えた
▼2000年代初めまでは高運賃のために乗降客数が伸び悩んでいた北総鉄道も、ついに運賃値下げにかじを切り、今年6月には運賃値下げを発表した
▼思い返せば、筆者が新卒で記者となって初めて取材したのも、同NTに計画されていた公共施設だった。どこまでも続く田園地帯の一画に、新たな都市が出来つつある頃だ。個人的にも、隔世の感を禁じ得ない。

会員様ログイン

お知らせ一覧へ