コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/01/21

大島渚監督

▼大島渚監督といえば、テレビなどで挑発的な発言をする論客としての印象が鮮烈だが、筆者にとってそれ以上に忘れがたいのは、監督作品「戦場のメリークリスマス」である。その大島監督が今月15日に80歳で亡くなった。映画界のカリスマがまたひとり去り、時代の移ろいを感じさせられた
▼「戦場のメリークリスマス」は1983年の作品だから、公開からはや30年になる。当時「戦メリ」の愛称でブームになったが、大島監督の劇場映画作品では意外や後ろから数えて3番目、いわば後期の作品だ。全編にみなぎる張り詰めた美意識に公開当時、二十代半ばの筆者はたちまち魅了された。映画館に三度も通い、周囲にもその素晴らしさを熱っぽく説いたものだ
▼戦争中の収容所という極限状態で出会った男たちの織りなす複雑なドラマを軸として、西洋と日本の文化的衝突が見事に描かれていた。衝突といっても戦闘シーンは皆無で、そこには、死に縁取られた男たちの愛憎渦巻く“色気”が立ち上っていた。まさに大島監督ならではの異色の戦争映画だった
▼しかし、この作品を異色たらしめている最大の要因は何といっても配役の妙だろう。デビッド・ボウイに坂本龍一、ビートたけしと、いま考えても豪華を通り越して奇跡のようなキャスティングで、それが得も言われぬ化学反応を起こしていた
▼いまでもビートたけしの顔が大写しになるラストシーンを思い出すたび、坂本龍一の美しいメロディが鳴り、胸が熱くなる。偏っていると言われようと、筆者にとっての大島渚は今も昔も「戦メリ」なのである。

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