コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/04/24

TDR開業30周年と浦安市

▼東京ディズニーランド(TDR)が開業30周年を迎え、地元の浦安市では大きな盛り上がりを見せている。筆者も自分の子供が小さな頃は何度も出かけたが、最近ではすっかり「近くて遠い魔法の国」になってしまった。それにしても30周年とは、時がたつのが速い。さらに遡れば、浦安町(当時)の「遊園地誘致」決議やオリエンタルランド社の設立からはすでに半世紀を超える
▼何より驚くのは、その衰えぬ人気ぶりだ。圧倒的な集客力にはどんな秘訣があるのか、あやかりたいと思う企業も少なくないだろう。東京ディズニーシー(TDS)を含めた入園者は延べ5億人超。年間入園者数の推移もほぼ右肩上がりで、2012年度には過去最高の2750万2000人に達した。長引く景気低迷などどこ吹く風だ
▼名称に「東京」と冠せられていることから、千葉県に所在するのを意識する人は少ないかもしれないが、TDRによって最も恩恵を受けているのが地元・浦安市だろう。キャラクターの使用が厳しく制限され、地域振興にさほど結びついていないとの声も聞かれるが、その一方で同市を「財政が日本一豊かな都市」に押し上げた。どの自治体もうらやむ「うらやま市」と呼ばれる
▼そんな同市もかつては山本周五郎の『青べか物語』で知られる小さな漁師町だった。物語の中では、昭和初期の様子として「荒れた平野の一部にひらべったく密集した、一かたまりの、廃滅しかかっている部落」と表現されている。1950年代には、赤字で財政が破たんする「財政再建団体」にもなったが、60年代以降は埋め立て造成によって市域が4倍にも広がり、住環境の良さなどが注目されて、マンションなどの住宅建設が相次いだ。東日本大震災では液状化などの被害が出たものの、依然として「TDRのまち」のブランド力は健在だ
▼TDR側では今後も地域貢献を続けるとしているが、地元としては新たな共存共栄の道を探るのか、「TDR頼み」に見切りをつけるのか、その方向性が問われてくる。

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