コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/07/22

富士山の噴火リスク

▼世界遺産登録の高揚に水を差すつもりはないが、富士山が重大な噴火リスクを抱えているという衝撃的な分析結果が、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)らの研究チームによって明らかにされた。あの富士山が噴火で姿を変えてしまったら、などと考えるだけで目を覆いたくなる
▼分析結果によれば、現在の富士山は巨大地震の強い力で内部にひびが入ると、そこから爆発的な噴火を起こしかねない状態にある。そうなれば、火山灰が首都圏まで降り注ぎ、火砕流が富士山の裾野半径15キロを飲み込む危険があると、専門家は指摘する。300年以上も眠ったままの霊峰。その不気味な沈黙が嵐の前の静けさだとは思いたくない
▼神々しいほどの美しさゆえか、つい忘れがちだが、富士山は高さでも山体の大きさでも日本最大の活火山である。ここ10万年で急速に巨大化したと考えられており、その意味では「若い火山」に分類される。地下には、マグマが通った後に冷えて固まった岩脈が無数にあり、その下はマグマやガスが滞留した状態になっている。大きな地震などで地殻変動が起きれば、岩脈に隙間ができて一気にマグマが吹き上がってくる可能性がある
▼地震で噴火のリスクが急激に高まるのは、直近の噴火、1707年の宝永噴火でも明らかだ。このときは噴火の49日前にM8級の地震が発生している。地震の衝撃で隙間ができたことが引き金となり、押さえつけられていたマグマが南東側の山腹から噴出したとみられている
▼当時の状況が2011年3月11日の東日本大震災後の現状と似通っているとも言われ、事実、震災直後の3月15日には静岡県富士宮市を震源とするM6・4の地震が発生。その後も富士山周辺で地震が頻発し、富士山の深部では、地下のマグマ滞留を意味する低周波地震も起きている
▼山といえば、真っ先に富士山を思い浮かべる日本人は多いだろう。我々にとって特別な意味を持つ象徴的存在。しかし、その美しさが自然の脅威と隣り合わせにあることを決して忘れてはならない。

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