コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2013/09/24

リニア中央新幹線

▼1973年の基本計画決定から40年。この長い道のりの間、話題に上ったり、ときには我々の視界から消えていたりしていた「リニア中央新幹線」。その詳細なルートが先日発表された。初志貫徹ともいうべきJR東海の信念には敬意を表するが、果たして21世紀版「夢の超特急」は、予定通り2027年の開業と相成るのか
▼計画では東京・品川―名古屋間286キロがわずか40分で結ばれる。開業後、経営体力を回復させ、大阪までの延伸工事に着手する「2段階方式」となる。建設費は名古屋までで約5兆円、大阪までで約9兆円と試算されている。経済効果などを考えれば、沿線自治体のみならず、いやがうえにも期待が膨らむ。来年度の着工予定だが、実際のリニアが走り出すまでがまた困難な道のりとなるのは想像に難くない
▼ルートの86%がトンネル構造となり、地上の地権者に補償する必要のない40m以深の大深度地下掘削や超電導などの最新技術が使われる。南アルプスを貫く長大山岳トンネルは約25キロとも言われ、難工事が予想されている。最新技術とのせめぎ合いの様相さえ呈するかもしれない。当のJR東海も「掘り始めてみたら、何が起こるかわからない」と不安を隠さない。本州を東西に分ける大地溝帯(フォッサマグナ)の存在や、リニアがすれ違う圧力によるトンネル壁面の疲労や地下水への影響、トンネル掘削で生じる残土処理、さらには震災復興や東京五輪開催に向けた公共工事の増加に伴う建設資材の不足など、懸念材料を上げればきりがない
▼このタイミングでどうしても考えるのは「東京五輪までに名古屋まででも」となるが、JR東海は「どうみても2ケタの年数はかかる。鉄腕アトムが一緒に掘ってくれれば別かもしれないが……」と、ユーモアとも諦観ともつかない返事をしている
▼トンネル掘削など日本の技術の粋は世界に見せたい。しかし工事中も開業後も、何よりもまずは安全である。前例のない巨大プロジェクトだからこそ、焦らずじっくり腰を据えて取り組みたい。

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