コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2011/11/28

修復なった市原市「奈良の大仏」

▼奈良の大仏――とはいっても、かの有名な東大寺大仏ではない。本県の市原市奈良にある「奈良の大仏」である。高さ1.74メートル、台座と基盤を合わせても2.58メートルの石造の立像で、のどかな田園地帯の、スダジイやイチョウの古木に囲まれた一角に鎮座する
▼東日本大震災で台座から転落し、首がもげたり胴体の一部が破損したりする被害を受けたが、このほど修復作業を終え、現地で開眼供養が行われた。市の文化財に指定されているため、約80万円の修復費用の半分を市が負担した
▼参道沿いには「大仏通り」と名付けられた道路が走る。筆者も震災前、この通りの名にひかれて偶然立ち寄ったことがあり、その大仏が被害にあったと聞いて心が痛んだ。修復が叶い、何よりホッとした。大仏を守り続けている地域の方々も感慨ひとしおだろう
▼現在の大仏は文化元年(1804年)の建立だが、初代は承平元年(931年)に造られ、銅製だったと伝えられる。下総付近で朝廷に反乱を起こした平将門が新皇を名乗ったとき、この地の北方に京を模した自らの都を構え、東大寺の大仏を模して建立したとの伝説も残る
▼ところで「奈良」という地名の由来は諸説あるようだが、その中に「人を一つ(大)にすることを示すことは良いこと」というものがあった。いささかこじつけめいた説にも聞こえるが、今回の震災では、日本が心を一つにした側面があった。自ら傷を負われた大仏様だが、これからも変わることなく、木立の中から、復旧・復興に向かう私たちの姿を見守っていてくれることだろう。

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