コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2018/08/28

保護男児に見る2歳の世界

▼子どもたちの夏休みシーズンもまもなく終わるが、自ら顧みてこの季節に田舎で野山を駆け回った幼少の日々を思い出す。それは不思議なほど楽しい瞬間だったが、この場合はどうだろう
▼山口県周防大島町で行方不明になった2歳の男児が68時間ぶりに山中で無事保護された。発見までの3日間、なぜ体力が持ったのか、どんな心理状態だったのか。おそらく大人とは違うものを見たり、聞いたり、行動したりしたうえに、様々な幸運が重なったのだろう
▼専門家によれば2歳児は、下半身が安定してきて、歩いたり跳ねたりすることが楽しくて仕方がない時期だという。チョウやトンボ、木洩れ日、風の音などに夢中になるうちに何百メートルも移動していることもよくあるそうだ。かつての自分に置き換えてみても、なるほどと納得できる
▼好奇心も旺盛な年ごろだ。男児が一人で山に入っていったのも、好奇心からではないかと専門家は指摘する。男児を発見したボランティア男性が「子どもだから山の上に上っていく習性があると思っていた」と語るのも、うなずける話だという。この男性が短時間で男児を発見しなければ、その後の展開が変わっていた可能性も考えると、その迅速な判断には頭が下がる
▼30度を超す気温の中で生き延びられたのは、沢の近くで比較的涼しく、木陰で休息できていたからとみられる。水分は沢の水などを飲んで取り、カロリーは体内に蓄えていた脂肪を消費してまかなったことが考えられる
▼2歳児は大人が思う以上に冷静で、夜の暗闇も怖くなかった可能性があるそうだ。実際に2歳頃までの子は部屋を真っ暗にしても怖がらず眠れることが多いという
▼とはいえ、母親たちと離れて一人で過ごした3日間は、どんなにか心細かったに違いない。山に入り込んだときは、筆者がかつて経験したようにワクワク感で一杯だったかもしれないが、その後は寂しくつらい思いもしただろう。それでも無事保護され、元気に退院したことは、何よりの朗報だった。

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