コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2019/01/16

ボヘミアン・ラプソディ

▼日本で火がつき、後にビッグネームとなったアーティストは少なくない。英ロックバンド「クイーン」などは、その最たるものだろう
▼ルックスのよさもあって、デビュー当初は日本で黄色い声援を受けるような存在だったが、それが世界的な評価を得るまでには多少の時間を必要とした。しかし、そうなるにはそうなるにふさわしい実力がもとより備わっていた。ドラマチックな様式美、曲展開の意外性など高い音楽性はデビュー当時から抜きんでていた。その楽曲に多大な貢献をしたのが、言うまでもなくバンドの中核をなすボーカリスト、フレディ・マーキュリー(1946~91)だ
▼フレディの生涯を描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」が空前のヒットを記録している。幅広い世代に支持され、SNSなどの「口コミ」で評判が広がる異例の事態だという。リアルタイムでクイーン体験をした世代のファンとしては、我が意を得たりの思いだ
▼映画のタイトルとなった「ボヘミアン・ラプソディ」は、数々のヒット曲を物したクイーンの中でも筆頭格の名曲だ。当時にしては異例の6分という長尺の曲だったこともあり、レコード会社などから強い反対を受けながらもシングルカットされ、大ヒットに至るくだりは、映画の中でも詳しく描かれている
▼しかし何といっても、映画の主題は不世出のボーカリスト、フレディの愛と苦悩だ。エイズに侵され、45歳の若さで亡くなった。映画ではその複雑な出自や同性愛などが赤裸々に描かれ、今ではとても考えられないほど生きづらい世の中だったに違いないと、胸のつぶれる思いでスクリーンにくぎ付けになった
▼映画は、20世紀最大のチャリティーコンサートと言われる85年の「ライブエイド」での圧倒的なパフォーマンスで締めくくられる。さらにエンドロールでは、晩年の熱唱「ショウ・マスト・ゴー・オン」が流される。命のある限りショウを続けなければ――凄絶な歌声でそう訴えかけるフレディの姿は、いまなお私たちの心に突き刺さる。

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