コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2020/11/10

喜ばしい灯台の重文指定

▼船舶の航行目標としての役目を担う灯台には、人を引きつける独特の魅力がある。荒波に打たれる姿が孤高で気高く、夜通し光源を明滅し続けるさまは芯の強さを思わせる。そのためか、つい擬人化したくなる存在でもある
▼海上保安庁によれば、全国には3千余りの灯台があるが、この10年間で129基が廃止された。一方で、少数ではあるが観光資源として保存されていくものもある
▼本県・銚子市の犬吠埼灯台が近くの旧霧笛舎・旧倉庫とともに重要文化財に指定されることになった。同庁が管理する現役灯台では初の指定となる。2018年の文化財保護法改正で修理手続きなどが弾力化されたことが後押しとなった
▼犬吠埼灯台は、太平洋に突き出す犬吠埼の崖の上にある煉瓦造の二重壁構造。北太平洋航路のための最初の灯台で、慶応4(1868)年に来日した英国人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンの指導で建設され、明治7(1874)年に初点灯した
▼日本を代表する灯台の一つとして、歴史的、文化的価値から2010年に国の登録有形文化財に登録されていた。同庁による「Aランク保存灯台」で、世界灯台100選、日本の灯台50選にも選ばれている。日本に5つしかない最大の第1等レンズを備えた第1等灯台で、灯塔高は31・3mあり、煉瓦製の建造物としては日本で第2位の高さを誇る
▼かつて筆者は館山市・沖ノ島にある小さな灯台「館山港沖ノ島灯台」を訪れる機会があったが、09年に解体撤去されたと聞き、ひどく寂しさを覚えた記憶がある。犬吠埼灯台とは規模も違い、灯塔高9・5mの愛らしい白亜の灯台だった
▼GPS装置の普及により小型船でも灯火に頼らず航行できるようになった昨今、その役割を終える灯台は少なくない。それだけに、今回の犬吠埼灯台の重要文化財指定の知らせは喜ばしい。その報もあって、訪れる観光客も増えたと聞く。140年以上破損することなく風雨に耐えたその優雅な姿を、いつまでも私たちに見せ続けてほしいものだ。

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