コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/03/02

復活のレコードに思う

▼「音楽は好きだが、CDでは買わない。サブスクリプション(定額制課金方式)で十分」という人が多い時代に、目を疑うような記事を相次いで目にした。レコードの人気が復活し、国内の生産枚数もこの10年で10倍以上になったという。レコード世代にとってはうれしい話だが、今や手元にレコードがあってプレーヤーがないという現状に、複雑な思いを抱いてしまう
▼とくに米国では2020年上半期のレコードの売り上げがCDを上回ったというから、この発表は関係者ならずとも衝撃だった。日本国内でも2010年には生産枚数が10万枚だったが、15年には60万枚、19年には約120万枚と右肩上がりだ
▼一方のCDは右肩下がりに歯止めがかからず、1998年のピークに比べ生産枚数は半分以下。それでもいまだ約1億3000万枚(19年)あり、レコードとは二ケタも違い、米国とはだいぶ事情が異なる
▼レコード復活の背景には、意識の高い音楽ファンが増えたこともあるとみられる。レコードからCDへと時代が移った30年以上前には「CDは音質が良く、収録時間も格段に長い」などとしきりに喧伝され、確かに手間のかかるレコードに比べれば、手軽な面が多かった
▼一方で、CD時代になって音楽の魅力がどこか薄れたように感じていたのは、どうやら筆者だけではなかったようだ。近年、CDでは得られない柔らかなレコードの音質に魅了される人が増えていることに、当時の自分の印象もあながち間違いではなかったと気を強くする
▼収録時間にしても、CD1枚を通して聴くのはいささか長すぎて、お得感より疲れを感じることのほうが今でも多い。片面20分前後、両面40~50分のレコードは、聴き通すのに程よい長さだった
▼今回のブームを機に、家に残るレコードを取り出して聴いてみたい気になるが、冒頭で触れたように、プレーヤーをとうに手放してしまって今では聴くことが叶わない。再びレコードを聴ける環境を整えるべきか、思案の最中である。

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