コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2021/09/07

屋台骨支えた名ドラマー

▼どこか地味で目立たず、「縁の下の力持ち」「屋台骨」などと称されることの多いドラマー。しかし、ドラマーこそが実はバンドの「肝」だったと気づかされることは少なくない。そのポジションにその人物がいなければバンドは成立しなかったとさえ言われることもある
▼英国のバンド、ザ・ローリング・ストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツさんが先月24日に80歳で亡くなった。いつもクールに涼しげな表情で、最小限のシンプルなドラムを淡々と叩くその姿が、記憶に深く焼きついて離れない。ミック・ジャガーやキース・リチャーズという並外れた個性派のスターを押し立て、ストーンズ一筋で半世紀以上バンドを支え続けた力は並大抵のものではないだろう
▼英国人のブロードキャスター、ピーター・バラカンさんは追悼記事で「時代の終わりを感じる」と寂しさを語った。いまや遠くなりつつあるロック黄金期がまさに終わりを告げたと喪失感をあらわにしている
▼こんな逸話も知られる。あるときミック・ジャガーが酔ってチャーリーに電話して「俺のドラマーはどこだ?」と言うと、チャーリーは激高し、ミックの元へ行って、一発殴ってこう言った。「二度とそんなことを言うな。お前は俺の歌手だ」
▼若いころから自己陶酔や目立ちたい気持ちとは無縁の人だったようだが、自分がストーンズのサウンドを支えている自負は有り余るほど内に抱えていたことがうかがえる
▼不良のイメージも強かったバンドにあって、異色の紳士的なルックスと成熟した演奏で「ストーンズの心拍」とも評された。性格は外見どおり物静かで実直そのもの。70年代、バンドが薬物漬けになった時も手を出さず、生涯、家族を愛し続けた
▼2004年の喉頭がんなど、たびたび病魔や体調不良に見舞われていたが、その都度復帰して、ライブで元気な姿を見せ、生涯現役を貫いた
▼代理人は「家族に囲まれ、安らかに亡くなった」との声明を発表した。何とも寂しいが、今はお疲れ様というほかはない。

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