コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2022/02/10

災害に常時の備え

▼近年、地震や津波などの被害想定がメディアで報じられると、それに伴うシミュレーションCGが流されることが多い。実感をもってとらえられる一方で、切迫した恐怖も感じてしまう。やはり2011年の東日本大震災を契機に生まれたトラウマが影響しているように思う
▼昨年末に政府の中央防災会議が公表した、日本海溝・千島海溝沿いにおける巨大地震の被害想定でも、数字で示された被害の大きさとともにシミュレーションCGに衝撃を受けた
▼両海溝でマグニチュード9クラスの巨大地震が発生した場合、死者は19万9000人(日本海溝)と10万人(千島海溝)に達するとの数字には、驚きを隠せなかった
▼千葉県内に限っても死者は最大で約200人に上り、22人が死亡した東日本大震災を大幅に上回る想定となった。避難者は発生から1日後で最大8900人と見込まれ、停電や道路の損傷も発生するなど、東日本大震災に匹敵する被害が起こるリスクが浮き彫りになった
▼一方、房総半島沖で1000年ほど前に未知の巨大地震があり、九十九里浜一帯が大津波に襲われた可能性があるとの調査結果が昨秋、報道された。産業技術総合研究所などのチームが発表したもので、地震の規模はマグニチュード8・5~8・8で、当時の海岸線から3㎞以上浸水したと推定されるという
▼平安~鎌倉時代の800~1300年頃の地層から、津波で運ばれた砂や生物の化石などが堆積した層が見つかり、該当する記録がないため、未知の地震の津波と判断された
▼震源域は房総半島付近の深さ20~50㎞にあるフィリピン海プレートと太平洋プレートの境界の可能性があり、約10mずれ動くことで海底が変形して津波が発生したと考えられる
▼これまで巨大地震を想定していなかった領域だといい、さらに広域を調査し、震源を特定する研究が必要だと、専門家は指摘する。私たちがすぐにできることは限られているかもしれないが、可能な限りの備えと心構えの重要性を改めて認識させられた。

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