コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2022/03/04

ロ侵攻に思う「キエフの大門」

▼今回のロシアによるウクライナ侵攻で、最大の標的は首都キエフと目され、現実にこの首都を巡る攻防が激化している
▼キエフという都市の名を耳にして真っ先に思い出したのが、ロシアの作曲家ムソルグスキーによる『展覧会の絵』でフィナーレを飾る「キエフの大門」だ
▼この大門はキエフ大公国時代のキエフの中央門で、「黄金の門」と呼ばれた。13世紀にモンゴル帝国の軍勢によって破壊されたままだったが、1982年に復元。現在では史跡として首都キエフの歴史的地区にある
▼『展覧会の絵』は、ムソルグスキーが1874年に作曲したピアノ組曲で、画家の友人の死を悼み、その遺作展で観た絵画の印象を音楽に仕立てた。曲ごとに拍子が異なるのは、歩きながら絵を見ている、その歩調を表していると言われるが、今この曲を聴けば、少なからず以前とは違う感慨が湧き上がるだろう
▼作曲当時のピアノ組曲はその後、多くの作曲家によって編曲され、管弦楽用の編曲によりトランペット・ソロで始まるラヴェル版がとりわけ名高い。ストコフスキー版やホロヴィッツによるピアノ版などもある
▼編曲はクラシック以外の分野にも及び、その先駆けと言えるのがイギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、エマーソン・レイク・アンド・パーマー(ELP)による演奏だった。ロック世代の筆者には、このELP版がことのほかなじみ深く、大胆な編曲と、モーグ・シンセサイザーなどを駆使した、攻撃性と抒情性あふれる世界観に圧倒された
▼ELP版には原曲にはない歌詞が付されており、フィナーレの「キエフの大門」ではこう締めくくられる。「我が生に終わりなし、我が死に始まりなし、死こそ生なり」
▼この絶唱をどう読み解くかは聴き手に委ねられるが、目を疑うようなウクライナ侵攻の暴挙がメディアを通して伝えられる今だからこそ、できうる限り前向きにとらえて「生への賛歌」と解釈したい。ウクライナに一刻も早く平和な日々が戻ることを、ひたすら願うばかりだ。

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