コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2022/09/27

相次ぐ大型書店閉店

▼大型書店の一時閉店のニュースが相次いでいる。本の街「神保町」のシンボルとして親しまれてきた三省堂書店神保町本店(東京都千代田区)が今年5月に閉店したことは記憶に新しいが、今度は八重洲ブックセンター(東京都中央区)が来年3月に営業を終了するという。いずれも一時閉店とはいえ、昨今の出版不況下ではやはり寂しさを禁じ得ない
▼八重洲ブックセンターはJR東京駅前に、大型書店の草分けとして1978年9月に開業した。当時としては国内最大級の書店として、地下1階、地上8階のフロアを備え、100万冊の在庫をそろえた
▼出版市場が低迷する中、2016年には出版取次大手トーハンが、同センター運営会社の株式の半分近くを大手ゼネコン・鹿島から取得し、業績の回復を図ってきた
▼今回の閉店は本店周辺の再開発に伴うもので、44年の歴史にいったん幕を下ろすことになり、28年度に完成予定の超高層大規模複合ビルに再出店する計画という。再出店までの間は仮店舗での対応を検討している
▼一方の三省堂神保町本店は、ビルの老朽化に伴う建て替えのための一時閉店で、同じく建て替え中は近くの仮店舗で営業を続け、25年に新店舗での開業を目指す。これまでの店舗は1981年の開業で、紀伊国屋書店新宿本店(東京都新宿区)などと並んで、都内の大型書店の先駆けだった
▼5月の閉店時には、店舗正面に掲げられた「いったん、しおりを挟みます。」という巨大な懸垂幕が話題になった。本好きには何とも泣かせるコピーで、胸が熱くなり、再開を心待ちにせずにはいられない方も多いだろう
▼筆者もその一人だが、一方の八重洲ブックセンターの一時閉店は、個人的にさらに感慨深い。東京駅前の立地ということもあって、学生時代には何度も訪れ、五冊、十冊と買い込んでは、その重みに四苦八苦しながら千葉まで戻ってきたことを懐かしく思い出す。振り返れば、あの本の重みこそ、いまの自分の糧となっていることを忘れるわけにはいかない。

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