コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/01/25

わが心のジェフ・ベック

▼わが青春のヒーローがまた一人、鬼籍に入ってしまった。世界的なロックギタリスト、ジェフ・ベックが78歳で亡くなった。近年まで精力的な活動を続けていただけに無念の一言に尽きる
▼何よりギターに歌心が満ちていて、様々な曲を体の一部のように自在に弾きこなした。天才肌のギタリストとは、彼のような存在を言うのだろう。幅広い音楽性に、最先端の音楽を追求した求道者だった
▼ロンドン生まれで、1960年代半ばにエリック・クラプトンの後任としてヤードバーズに加入し、一躍脚光を浴びた。脱退後には「ジェフ・ベック・グループ」を結成するなど、ハードロックの形成に影響を与え、その後はソロ活動に向かった
▼75年には全編ギターインストゥルメンタルのアルバム「ブロウ・バイ・ブロウ」を発表し、フュージョンを大胆に取り入れた。ロックにとどまらず多くのギタリストに影響を与え、その後もテクノ、クラシックなど多くの音楽を吸収し、音楽スタイルを絶えず変化させ続けた
▼グラミー賞を8回受賞し、ロックの殿堂入りも果たしているが、日本ではクラプトンとジミー・ペイジとの3人を「3大ギタリスト」と呼び、独自の固有名称として定着した
▼「孤高」「変人」などと形容されることもあったが、実際には演奏技術のみならず、音楽への態度や人間としての度量にも秀でた人だった。そうした謙虚さは、彼が残した言葉からもうかがえる。「レコード会社から多くを期待されず、その割にはそこそこ売り上げを稼いでいた。だから干渉されず好きにやらせてもらえた。幸せな音楽人生さ」
▼死去の報を受け、多くのミュージシャンが追悼のコメントを寄せたが、ジミー・ペイジの投稿が印象的だった。「六弦の戦士はもはやここにはいません」の一文に始まり、「彼の演奏は個性的で、想像力は無限大です」と続けている。「六弦の戦士」とは、彼を評するにこれ以上的確な形容はないだろう。そして、そこににじむ喪失感も筆者と同様、計り知れない。

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