コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2024/02/27

一極集中浮き彫り

▼総務省が発表した2023年の人口移動報告で、東京都は、転入者が転出者を上回る「転入超過」が6万8285人となり、前年より3万262人増え、2年連続の増加となった。新型コロナウイルス感染拡大前の19年の8万2982人に近づき、改めて東京一極集中が浮き彫りになった
▼コロナ禍の20、21年は超過数が減少していたが、経済活動の活発化などで移動が増え、東京一極集中が再び加速した。都心から郊外へ移る流れはどうやら一過性のものだったと考えられる
▼東京都は45万4133人が転入し、前年比で約1万4000人増えた。逆に転出は38万5848人で、1万6000人近く減った。転入超過数は過去最少だった21年の5433人から2年間で約12倍に膨らんだ計算となる
▼東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県)でも2年連続で転入超過が前年を超え、23年は12万6515人で前年比27%増。名古屋圏と大阪圏は、転出者が転入者を上回る「転出超過」となり、対照的な結果となった
▼都道府県別で転入超過は東京のほか、神奈川(2万8606人)、埼玉(2万4839人)、千葉(4785人)、大阪(1万792人)、滋賀(12人)、福岡(4387人)の6府県。残りの40道府県は転出超過となり、人口が流出した
▼政府は27年度に地方と東京圏との転出・転入者数を均衡させる目標を掲げているが、実現への道は険しそうだ。地方中枢都市を抱える県でも転出超過が拡大しており、地方の過疎化には歯止めがかからない状況だ
▼地方からの人口流出により、医療や介護、公共交通などで人手不足が深刻化しており、各分野で地域サービスが低下すれば、不便を感じる住民の転出に拍車がかかり、悪循環に陥る
▼コロナ禍ではテレワークが定着し、「地方移住の時代が来る」と言われたが、それも今回の数値からは期待薄だ。これまでも政府は目標時期が迫ると、期限を先延ばしにし、一極集中を是正できずにきたが、これでは政治的な責任も問わざるを得ない。

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