コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2024/12/24

「自分らしさ」進む幸福感

▼幸せとは? 幸せのかたちとは?――と聞かれても、容易に答えるのは難しい。100人100通りかもしれないが、幸せのありようが時代とともに変化してきたのは間違いない。昭和は「画一的な成功モデル」、平成は「価値観の多様化」、令和は「より柔軟な自分らしさ」と、大まかに括ることができようか
▼高度成長期には、大量生産・大量消費により、三種の神器のような「豊かさの象徴」が生まれた。戦後の復興には、全員が一丸となって目標へ進む必要があり、その原動力が「画一的な成功モデル」ともなった
▼平成に入ってバブル経済が崩壊すると、就職氷河期やリーマン・ショックなどにより「格差」が顕在化した。女性の高学歴化や未婚化など「価値観の多様化」も進み、「幸せのかたちは人それぞれ」との意識が高まった
▼令和に入ると、コロナ禍に苦しんだものの、今後は「さらに柔軟な自分らしさ」が進むと考えられる。AIなどの技術革新は、私たちの生活の多くの領域に変化をもたらし、時間や場所に縛られず、人生の軌道修正も容易になると想像される
▼将来を展望すれば、人口減少が急速に進む中、単身世帯が増加し、経済成長も見通しづらいが、先日の某紙に掲載されていた作家の五木寛之さん(92)の言葉には、まさに目から鱗だった
▼「日本は今、登り続けてきた山を下りる過程にあり、頂上を極めたあとに下りるのは当然の理」だと言う。登山を成長の時代とすれば、下山は成熟の時代ととらえ、「下山する時は景色を眺めながら、自分がなぜ山に登ったのか、その結果何を得たのかと、人間的な思考が浮かぶ」と、達観した言葉が並ぶ
▼「下山の時は、新しい登山の道半ばともいえる」との解釈も示し、「底があるからこそ、至上の幸福感があり、人間はいつも何とかして歴史をつないできた。生きるとは、そうした波の中で過ごすものだと納得すれば、おのずと幸せを感じる時がくる」と語っている。何というポジティブ思考かと、ただただ感服させられた。

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