コラム『復·建』

飛鳥・藤原が世界遺産

▼「飛鳥・藤原の宮都」(奈良県)が先月、ユネスコの世界遺産に登録された。国内の世界遺産としては27番目、文化遺産に限れば22番目の登録となるが、石舞台古墳や高松塚古墳など教科書でもお馴染みの資産が多く含まれることもあり、登録までにずいぶん時間を要した印象がある

▼「飛鳥・藤原の宮都」は飛鳥時代(6世紀末~8世紀初め)に、日本で初めて中央集権体制が確立したことを示す遺跡群で、奈良県橿原市、桜井市、明日香村にまたがる19件の資産で構成される

▼政治や行政の中心となった「宮殿・官衙(かんが)跡」、仏教が国家宗教になるまでの「仏教寺院跡」、前方後円墳から新しい墓制への移行を示す「墳墓」の3つに分類され、日本固有の伝統と、東アジアとの交流による外来文化の融合がうかがえる点でも価値が高い

▼国内では名実ともに第一級の史跡ばかりで、古代のロマンを大いに掻き立てられる資産でもある。1972年に明日香村の高松塚古墳から極彩色の壁画が発見されたときには、世紀の大発見として全国的な考古学ブームや飛鳥ブームを巻き起こした

▼ただ、宮殿や寺院など構成資産の多くが保存のために埋め戻され、「見えない遺跡」が多かったことも、登録が今日に至った一因とも言えよう。それだけに今後の調査・研究も俟たれるが、現地は今もそのまま古墳や寺院跡、宮殿跡などが残り、のどかな田園風景が広がっている

▼かれこれ30年以上も前になろうか、筆者も家族で明日香村をレンタサイクルで巡ったことがある。どういう順路だったか、あまり記憶にないが、高松塚古墳や石舞台古墳、飛鳥寺、酒船石など主な史跡を踏破した。夏だったが、昨今ほどの猛暑ではなく、史跡が点在する田園風景がなんとものどかで美しかったことを、今でも鮮明に脳裏に浮かぶ

▼宮都巡りの最後は飛鳥寺で、日本最古の仏像である飛鳥大仏を拝む頃には疲れ果てていた。そんな懐かしい思い出も含めて、今回の飛鳥・藤原の世界遺産登録には特別な感慨を禁じ得ない。