コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/05/31

広がる書店空白地域

▼いつからそんな買い方をするようになったのか。ときおり書店には赴くものの、めぼしい本を眺めては頭の中でチェックしておき、後日ネットで購入することが増えた。書店にとっては、はなはだありがたくない客だろう。ネット注文なら荷物にもならず安直だが、重要な何かが抜け落ちてしまう気もする
▼書店の減少は深刻で、書店が一つもない「書店ゼロ」の市区町村がいまや全国で26・2%に上る。いわゆる「書店空白地帯」の拡大が止まらないという。衰退を食い止めようと、ネット書店の送料無料の規制などの検討も始まっている
▼調査によると、書店がないのは全国1741市区町村のうち、456市町村。都道府県別では、沖縄が56・1%と最高で、長野の51・9%、奈良の51・3%と続く。福島、熊本、高知、北海道も4割を超えた。全市町に書店があったのは広島と香川の両県だけという
▼市区町村ごとにみると、書店がない市は792のうち17(2%)だったのに対し、町は743のうち277(37%)、村は183のうち162(89%)だった
▼全国の書店は21年度には1万1952店で、10年前から約3割減少。人口減少や雑誌の売り上げ急減、ネット書店の台頭などが、経営が厳しい背景にある
▼紙の出版物の推定販売金額は昨年が1兆1292億円と、ピーク時の1990年代の4割にとどまる。逆に電子出版市場は右肩上がりで、昨年は5013億円と、出版市場全体の3割を超えた。ネット経由の出版販売額も直近10年で6%から19・4%に急拡大している
▼品揃えや配送の速さなどではネット販売が優位だが、実際に手に取って触れ、その場で購入する楽しさも、忘れかけているだけで必ずあるに違いない。ネットが自分のニーズにすべて応えてくれるかといえば、そうでもなく、書店の棚を前にして「こんな本も出ていたのか」と、自らの不明を知らされることもある
▼これからは、本をすぐさま手に取れる書店の良さを再認識して、書店を大切にする客でありたいものだ。

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