コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/09/13

関東大震災100年

▼関東大震災から9月1日で100年を迎えた。大きな節目だけあって、この100年前の大地震について実態把握や被害状況などの新たな知見や分析がなされ、その成果が大きく紹介された。8KスキャンしAI技術でカラー化された当時の記録映像も報じられ、当時の壊滅的な状況に背筋が凍った
▼昼時の都市を襲ったマグニチュード7・9の巨大地震は、あちこちに火災を発生させ、東京や横浜の市街地を広く焼いた。死者は全体で10万5000人に及び、その9割近くが火災による犠牲者だった
▼さまざまな災害が頻発化・激甚化し首都直下地震の可能性も取りざたされる近年にあっては、ますます切迫感を覚えずにはいられない。こんな大地震がいま起きたら、私たちに何ができるのか、首都圏はどうなってしまうのか、考えるだけで恐ろしいが、現実にそれはいつ起きてもおかしくない状況にある
▼当時の激しい揺れは土砂災害や津波ももたらし、神奈川県の箱根や丹沢山地、横浜や鎌倉、三浦半島、千葉県南部の斜面で被害を起こし、津波は伊豆半島や静岡・熱海で12m、千葉・館山で9mの高さに達した。関東大震災は典型的な複合災害だった
▼千葉県内の犠牲者は1200人以上で、館山市や南房総市などで震度7の揺れがあったと推定され、2万棟近い住宅が被災した。次の地震として懸念される首都直下地震では、千葉市や船橋市を中心に住宅が倒壊し、火災も広がると想定される
▼県が東日本大震災を踏まえてまとめた最新の被害想定では、県北西部を震源とするM7・3の地震で千葉や船橋、習志野など28市町で震度6の揺れが観測されると予測。火気の使用が多い時間帯である冬の午後6時の発生なら、全壊・消失は約8万1200棟とされ、関東大震災の4倍に上ると想定される
▼筆者は以前、館山市で関東大震災により2mも隆起した海岸を目の当たりにして、巨大なエネルギーに愕然とした記憶がある。100年前の教訓をどう生かしていくのか、次への備えが求められている。

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