コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/10/12

山火事 温暖化進める悪循環

▼今夏も危険な暑さがうんざりするほど長く続いたが、こうした地球温暖化による高温などが原因の深刻な異常気象が頻繁に起きている。世界各地で発生した大規模な山火事もその一つだ。山火事の拡大による、負のスパイラルというべき悪循環がますます懸念される
▼直近の主な事例だけでも、8月にスペイン・カナリア諸島で発生した山火事では2万6000人以上の住民が避難を強いられた。カナダ・ケベック州のシブーガモでは6月に周辺が大きく焼け、約1万人が1週間近く避難を余儀なくされた。記憶に新しいハワイ・マウイ島の山火事では、島西部の歴史的な街ラハイナを中心に2207の建物が被害を受け、島の主力産業である観光業が大きな打撃を受けた
▼山火事の出火原因には落雷やたき火の不始末などがあるが、自然界では山火事が落雷などで適度に発生する分には、枯れ葉などが燃えて新たな種子の発芽を促すなど、生態系の維持にも一役買い、悪い面ばかりではない。ただ、気候によっては自然鎮火せず燃え広がってしまい、温暖化による高温や乾燥が火災を大規模化させる
▼異常気象を分析する研究では、温暖化で火災が起こりやすい気候になる確率が2倍以上になっていることが報告されている。特に今夏は、高温で乾燥し、風が強い日が多く、リスクの高い日が昨年までより多かったという
▼山火事の大型化による懸念としては、森林がためた二酸化炭素(CO2)が大量に排出され、増えたCO2が温暖化を加速させ、高温で乾燥した空気が火をさらに大きくする。こうしたことがループして悪循環を引き起こす
▼山火事のリスクはオーストラリアやアメリカ南西部、ロシア、南ヨーロッパなどで顕著になっており、さらに広がる可能性が大きくなっている。山火事のみならず異常気象による被害は、直接的あるいは間接的に多くの災害のリスクにつながる。温室効果ガスの排出削減は喫緊の課題で、早急に対策を進めなければ、地球の未来は極めて危ういと言わざるを得ない。

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