コラム「復・建|日刊紙 日刊建設タイムズ

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2023/12/20

揺らぐGDP世界3位

▼世界2位の名目国内総生産(GDP)が誇らしく思えたのは、もはや遠い過去の話になった。現在では3位の座も危うくなり、2023年のGDPはドイツに抜かれ、日本は4位に転落する見通しだ。「経済大国」としての地位はどんどん薄れている
▼日本が当時の西ドイツを抜いて世界2位の経済大国となったのは1968年。以後、長らくその地位を保っていたが、2010年に中国に抜かれ、半世紀を経て再びドイツに逆転される見通しとなった。かつての日本経済の勢いを知る世代には、この現実を受け入れるのが何とも寂しい
▼GDPは、各国が生み出した付加価値の総額。付加価値とは、いわゆる「儲け」のことで、モノやサービスで生まれた儲けがGDPとなる。国の景気や経済状況を示す指標として、しばしば利用される
▼23年は、1位のアメリカが26兆9496億ドル、2位の中国が17兆7009億ドル、3位の日本が4兆2308億ドル。3位とはいっても、米国や中国との差は広がる一方だ▼日本の4位転落は、最近の円安やドイツのインフレ率の高さが影響するが、実質的な経済成長率の差が長年積み重なった結果でもある
▼IMF(国際通貨基金)の予測では、日本の23年のGDPは前年比0・2%減の4兆2308億ドル(約630兆円)、ドイツは同8・4%増の4兆4298億ドル(約660兆円)。日本経済の伸び悩みは、人口減少に伴う市場の縮小が最大要因とされるが、ドイツの人口が日本のおよそ3分の2であることを踏まえると、ここ30年ほどの日本の名目賃金が1.1倍しか上がっていないことも響いていると言える
▼経済規模が大きければ国民が幸せというわけではないにせよ、人材の流出や、国際社会における発言力の低下が懸念される。IMFのさらなる見通しでは、2026年にはインドにも抜かれ、わずか3年で5位に落ちるとも言われている。日本が一定の存在感を保つためには、思い切った賃上げの継続や未来への投資がより一層求められている。

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