2024/10/11
新幹線60周年
▼新幹線が東海道区間(東京―新大阪)の開業から10月1日で60周年を迎えた。人間で言えば、ちょうど還暦。「夢の超特急」として高度経済成長期の象徴ともなり、日本の経済・社会の発展とともに走り続けてきたその功績は計り知れない
▼東海道区間は1964年に世界初の高速鉄道として開業し、東京、名古屋、大阪の3大都市圏を結ぶ大動脈となった。新幹線の最高速度はこれまでに時速210㎞から320㎞までアップし、路線網も当初の6倍以上に拡大。本州から北海道、九州にまで延伸した
▼東海道を皮切りに、72年に山陽、82年に東北と上越、92年に山形、97年に秋田、2004年に九州、15年に北陸、16年に北海道、22年に西九州と順次開業してきた。地図上の路線網を見れば、いまや大きな幹に立派な枝が伸びている様相だ
▼目覚ましい進化は路線の延伸や最高速度だけでなく、様々な変化から見て取れる。時代の流れで公衆電話や食堂車は姿を消したものの、輸送人員は東海道の開業時の1日平均約6万人から、全新幹線で18年度に約119万人に達した。高級化も進み、東海道にグリーン車を超える座席として、26年度中に完全個室の登場が予定される
▼最高速度のアップに伴い、先頭車の顔つきも変わり、0系や開業時の東北、上越を走った200系の「団子っ鼻」から、トンネル進入時に圧縮された空気が衝撃音を発する「微気圧波」を抑える目的で鼻が伸び、東海道・山陽のN700Sは10・7mに及ぶ。今後も鼻はさらに伸びる見込みだ
▼安全性の高さも世界に誇るもので、これまで延べ約70億人が利用したが、開業以来、乗車中に脱線や衝突などの列車事故で死亡した乗客はゼロ。安全システムの要となる自動列車制御装置(ATC)や、地震検知システムの進化など、安全へのたゆまぬ努力は特筆に値する
▼残念ながらいくつかのトラブルを耳にした昨今だが、安全神話は揺らいでいない。どこよりも安全で便利な新幹線として、今後も日本や世界を〝けん引〟していってほしい。